サハラノコト

好きなことを探して生きていく

花をかざるなんて、意味のないことだと思っていたのに

ずっと、花をかざるなんて意味のないことだと思っていました。

でもそれは

幸せを手放すのが怖いから、幸せなんていらないと

言っているのと同じことでした。

「今」を大切にして生きることを気づかせてくれた

きっかけについて綴っていきます。

 

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花を買うのにお金がかかる。

育てるのには時間がかかる。

毎日水を変えるのが面倒。

それなのに切り花にしてかざると数日で枯れてしまう。

そして何より、

枯れてしまった花を捨てる瞬間が一番嫌いでした。

 

キレイに咲いているときは注目されているのに

時期が来て枯れたらおしまい。

ぽいっと捨てられてしまう。

その瞬間がなんとも言えない罪悪感。

その罪悪感に耐えられなくて

花をかざるなんてことはしませんでした。

 

でもステキな雰囲気の人たちはみんな花をかざるなあと

気がついたのは最近のこと。

毎日水をあげて、

日の光に当てて、

大きな葉っぱを拭いたりしてあげる。

 

どうしてか惹かれて

そんな生活を送る方たちの動画を

なんとなく見始めるようになりました。

 

動画の中では

わたしが意味のないことだと思っていた行動を

その人たちは楽しんでいます。

大事にお手入れをして一緒に過ごしています。

 

今まであんなに興味がないと思っていたのに

丁寧な生活の様子に影響されたのでしょうか。

なんだかいいなあと思うようになっていきました。

 

実家は田舎なので大きな木や季節の花が咲くような環境でした。

葉っぱが落ちた木が囲われるようになれば

もうすぐ冬だなあと感じたり、

晴れた日には枝の上にキラキラ光る雪を見ていたり。

 

春になればふきのとうが顔を出したのを見つけて、

あ、今年も水仙が咲いたなあなんて

季節の変化を感じていました。

 

ひとり暮らしをするようになってからは

毎日の忙しさでそんなことすっかり忘れたつもりでした。

 

急いで前だけ見て職場へ向かい

暗くなってから帰宅する。

気がついたら季節は変わっていて

「変わりめ」をまた見逃してしまったと

時折思い出しては残念に思っていましたが

いつの間にかそれすらも忘れていたのでしょう。

 

そんなことを思い出していたら

久しぶりに花屋さんに足が向き

観葉植物のコーナーを見ていました。

まだ小さい繊細な枝葉を眺めて

何気なく1枚の葉っぱに触れてみました。

 

そのときの衝撃。

 

生きている葉の柔らかさとハリ。

絶妙なみずみずしさ。

なぜかしばらく立ち止まったまま動けませんでした。

 

うまく表現する言葉が見つけられず

「ああ、なんかいいなあ」

なんて薄っぺらい言葉しか出てこないのですが、

大袈裟に言えば感動したんだと思います。

胸にぐっとくるものがありました。

 

それから妙に花屋さんが気になって。

病院の帰り道にオレンジ色の花が目に入り、

思わず立ち寄ってしまいました。

 

そういえば、秋のくすんだ黄色や深いオレンジ色の花が

好きでした。

これから寒くなる季節にかざると

心が暖かくなるような色の花。

慣れない買い物でずいぶん時間がかかりましたが

ドライアンドラというネイティブフラワーと一輪挿しを買って

ドキドキしながら帰りました。

 

早速、窓辺にかざって過ごします。

今まで空いていた場所に花が一輪。

 

ただそれだけなのに

ちらりと視界に花が入ると

なんだかふんわりとした気持ち。

 

いつも頭で小難しく考えてしまってばかりでしたが

花を見て感じるのは

いいなあという真っ直ぐな感覚で

お気に入りの花鋏でお手入れするのは楽しくもありました。

蕾だったのがだんだんとふっくらとしてくると

思わず口元が緩んでしまいます。

 

水を変えるのが面倒だという心配は

優しい手触りの葉や茎に触れると不思議と穏やかな気持ちで

そんなに苦にはなりません。

 

植物を育てる人たちはこんな感覚を楽しんでいたのかなあと

少しわかった気がします。

 

花を入れ替える瞬間は、やっぱり好きにはなれません。

でも花を眺めたりお世話したりして感じる穏やかな気持ちは

なんとも言いがたく、いい時間を過ごせている感覚があります。

 

そうして思うことは

手放すのが嫌だからその行動をそもそもしないというのは

嫌われるのが怖いからお付き合いしないとか

裏切られるのが嫌だから信じないとか

そういう感覚と似ているのかなあと思うようになりました。

 

幸せを手放すことへの怯えから

だったら最初からいらないという考えでは

結局本当の幸せを知ることはできません。

本当は幸せになりたいと切望しているのにです。

 

そんなの悲しいですね。

いつかなくなってしまうかもしれないけど

絶対なんて約束はどこにもないです。

友達だって家族だって生きている限り永遠ではない。

でも一緒にいる幸せって変えがたいものですよね。

今、感じられる幸せをしっかりと感じる。

今を生きることが大切なはずです。

 

そう気がついてからは少し楽になった気がします。

花の寿命が来たら

今までありがとうと

感謝をしてさよならできるようになりました。

そのぶん毎日を大事に過ごします。

触れて眺めて、お水を変えて。

先のことばかり心配しすぎなくてもいい。

今をしっかりと感じることが生きるということ。

そんなことを教えてもらった気がします。